親愛なる太郎 君へ

 

君との付き合いを始めて2カ月になります。最初の頃のイライラ怒りっぽさは無くなり、一歩前進しましたね。元気なサッカー少年に戻れるよう、一緒に、睡眠のリズム回復に取り組みましょう。太郎君に伝えたいことは、自分を生かすも殺すも自分だということです。太郎君の今の状態は、睡眠覚醒リズム障害と自律神経障害です。その中枢についてわかりやすく図で説明します。

このハチの巣のような形は視床下部-下垂体と呼ばれます。たった4g+1g=5gの小さな中枢ですが、生命活動を維持する原始中枢なのです。

この中枢には①体内時計 ②自律神経中枢 ③睡眠覚醒中枢 ④摂食中枢の4つの中枢が隣あって入っています。両目から脳に入ってきた視神経は交差点を作って合体します。この交差点からもらった光の量によって、脳は昼と夜を区別しているのです。太陽と共に生活した30万年の狩猟生活、そして農耕生活をした縄文、弥生時代の体内時計は、落ち着いた静かな生活をしていました。ところが、人間は火を手に入れ、次に150年前、電球という人工照明を手に入れました。ここから、体内時計は日没後も光にさらされるようになりました。さらにこの20年、あっという間にスマホが普及し、夜の過剰な光にさらされた体内時計は、静かな生活から一転して興奮した生活を強いられるようになりました。体内時計の興奮は隣接する睡眠覚醒中枢と自律神経中枢を興奮させます。その結果、睡眠と覚醒のリズムが乱れます。呼吸、脈拍、消化吸収、排便のリズムが乱れます。子供は大変です。眠る時間に眠れない、起きる時間に起きられない、呼吸、脈拍が乱れイライラと怒りっぽくなります。学校に遅刻する、友達と仲良く出来ないなど子供の生活は乱れます。原因は現代病と言われているスマホ依存です。子供はスマホの誘惑に負け常時スマホと共に生活するようになります。学校からの孤立、なかには家族の中で孤立する子供もいます。太郎君には冷静に今の自分の生活状態を考えてほしい。今のままではいけないと気が付いたら、スマホに負けない強い自分を目指して欲しいです。太郎君の将来の夢と希望に向けて、友達と仲良く遊び、共に学んで欲しいと願います。

昨日から新しくメラトニンホルモン補充療法を始めました。薬が効果を発揮する為には、君の協力が大切です。ここからは協力についての話です、、。

協力とは、毎日夜8時過ぎたらスマホをしまい眼前から光を入れないことです。

10時になると消灯し、寝る体制に入って下さい。8時/10時のリズムを根気よく続けることが正常な睡眠リズム回復のきっかけになります。365歩のマーチを歌いながら、元気に歩く、走るなどの有酸素運動を日々継続すると回復は一段と早くなります。この協力は、君以外には誰も出来ません。すべては君次第です。夏になると13歳ですね!、自分のことは自分で責任を持つ歳です。2学期を目指して、今日も8時にスマホをしまい10時消灯を目標にし、未来の君に向けて夢を膨らませて下さい。今日、君に話した内容は、10月31日14時から福山市立深津小学校の4年生5年生6年生と父兄の皆さんに講演します。

 

君の主治医大田浩右より