睡眠時随伴症

 

睡眠時随伴症とは、睡眠中に起こる異常な行動のことです。パラソムニアとも言います。
睡眠時随伴症にはノンレム睡眠時随伴症とレム睡眠時随伴症の2種類があります。 

ノンレム睡眠時随伴症

 

ノンレム睡眠から目を覚ます覚醒時に起きやすい症状です。好発年齢は5~12歳の小児です。夢遊病、寝ぼけ。夜驚症、夜尿症などがあります。多くは成長するにつれて、自然治癒します。成人に多く発症するのは睡眠関連摂食障害SREDです。

 

・睡眠関連摂食障害 SRED
この病気はストレス過の20~30代女性に多く、入眠1時間くらい経ったノンレム睡眠時に無意識に冷蔵庫を開けて食べ物を探して食べたり料理を作って食べたりします。夜間に高カロリー食を摂取するため約半数の患者さんは肥満します。外傷(約30%)や火事を起こす危険性があります。ストレス過の女性が多いため気分障害や不安障害を合併していることもあり、多剤内服の方が多いです。そのため薬剤性SREDに注意が必要です。薬剤としてはトリアゾラム(ハルシオン)、ゾルピデム(マイスリー)またアミトリプチリン(トリプタノール)、リスペリドン(リスパダール)などでも見られるという報告があります。

 

治療

レム睡眠行動障害RBDとほぼ同様の治療を行います。他の医療機関で処方を受けているケースが多いので薬剤間の配慮が必要です。

レム睡眠行動障害 ソフトタイプ RBE rem sleep behavioral events

注目すべきは暴力的でない合目的的要素を含む単純小規模運動や発声はレム睡眠行動障害の前段階と考えられており、暴力的でないから、この程度は普通の寝相の悪さと軽視してはいけません。パーキンソン病の発症前段階に見られる早期サインとして重視する報告が散見されます。

レム睡眠行動障害 ハードタイプRBD

レム睡眠時に起きる症状です。好発年齢は50歳以降。

レム睡眠中に見た夢に伴って、筋肉が覚醒状態になり、身体が夢と一緒に反応し、行動します。睡眠中に大声でわめいたり、腕を振り回したり、足で蹴ったり、突然歩き出したり、隣で寝ているパートナーに迷惑をかけたり、自分自身も怪我をする場合があります。明け方の3~5時頃に起こりやすい特徴があります。

レム睡眠行動障害RBDを合併する病気

  合併率
 パーキンソン 30~50%
多系統萎縮症 70%
ナルコレプシー 50%

脳血管障害

常圧水頭症

トゥーレット症候群

まれ

 

 

治療

抗てんかん薬バルプロ酸ナトリウム、クロナゼパム、ドーパミンを増やすパーキンソン治療薬ドーパミンアゴニストを使用します。メラトニンが有効なことがあります。

他院でSSRI(ルボックス、パキシル、ジェイゾロフト、レクサプロ)、抗うつ薬(ミルタザピ)、βブロッカー(メインテート、アテノロール)、セレギリン等を内服中の方は減薬をお願いすることがあります。

 

鑑別診断

レム睡眠行動障害と類似の症状がみられる病気として

閉塞性睡眠時無呼吸、睡眠時周期性四肢運動(その多くはむずむず脚を合併)、薬剤性、睡眠関連過運動てんかんなどがあります。

これらはレム睡眠行動障害と極めて類似した症状、大声で寝言を言う、叩く、蹴る、殴る、叫ぶなどです。

各種抗うつ薬:三環系、選択的セロトニン再取り込み薬阻害薬SSRI、セロトニンノルアドレナリン再取り込み阻害薬SNRI内服中の患者さんに見られるレム睡眠行動障害に似た症状は発生機序は異なると考えられています。

したがって、レム睡眠行動障害の確定診断にはビデオ終夜睡眠時ポリグラフ検査vPSGが必要です。

 

検査

鑑別には1泊入院によるビデオ終夜睡眠ポリグラフ検査が必要です。とはいえ、患者負担4万円と高額であり、全員が受けれる検査ではありません。

 

予後

レム睡眠行動障害はシヌクリノパチーとの関連が強く、将来的にレビー小体の沈着するレビー小体型認知症やパーキンソン病へつながっていく場合があります。私は、60歳以上の男性の場合は本人に対し将来的にパーキンソン病やレビー小体病になるリスクがあることを伝えています。経過によって、少量の抗パーキンソン剤を予防的に処方する場合があります。

1280人の予後についての多施設共同研究(Brain142:2019)ではパーキンソン病などの神経変性疾患への移行率は年6.25%、初診時を起点にすると3年で17.9%、5年で31.3%、10年で60.2%と報告されています。